良さそうなAIを3つ課金して、結局1つしか使わなかった
AIを使い始めたころ、私は「一番いいAIはどれなのか」を知りたくて、いくつもの比較記事を読みました。文章が得意なもの、調べものに強そうなもの、資料づくりに使えそうなもの。どれも便利そうに見えて、ひとつに決めきれませんでした。
結果として、良さそうなAIを3つ契約しました。これで仕事が一気に進むはずだと思っていました。ところが数か月後、日常的に開いていたのはほぼ1つだけでした。残りは、たまに思い出して触る程度。毎月の課金だけが静かに残っていました。
契約した瞬間は、少し安心します。これで遅れずに済む。これで一番よいものを逃さずに済む。そう思えます。しかし、契約数が増えても、仕事の型が決まっていなければ成果は増えません。むしろ、どれを使うか決める小さな判断が毎回発生します。

なぜ3つも課金したのか
理由は単純です。失敗したくなかったからです。せっかくAIを使うなら、一番いいものを選びたい。仕事で使うなら、性能の低いものを選んで遠回りしたくない。そう考えるほど、比較表やランキングを読み漁るようになりました。
ただ、比べれば比べるほど迷いは増えました。ある記事ではAがよいと言い、別の記事ではBが向いていると言う。動画ではCが新しいと紹介されている。読めば読むほど、どれも正しく見えます。いつの間にか、AIを使う時間より、AIを比べる時間の方が増えていました。



3つあるほど、使い方は中途半端になった
複数契約すれば、場面ごとに使い分けられる。最初はそう思っていました。文章を書く時はこれ、調べる時はこれ、資料の構成はこれ。理屈ではきれいです。でも実際の仕事中は、そこまで器用に切り替えられません。
少し使っては別のAIに移る。前にどんな指示を入れたか忘れる。出てきた答えの雰囲気も違う。結局、同じ相談を別のAIに投げ直して、答えを見比べて、また迷う。便利にするための道具が、判断を増やす道具になっていました。
しかも、使い込んでいないので、どのAIにも自分の仕事の型が残りません。毎回、初対面の相手に説明するような状態です。これでは、課金を増やしても仕事は進みません。

気づき:「最強か」ではなく「主用途に合うか」だった
途中でようやく気づきました。私が探していたのは、自分の仕事に合う道具ではなく、世の中で一番強い道具でした。でも、経営者や管理職が日常でAIを使うなら、そこまで複雑に考えなくてよかったのです。


大事なのは、「自社で何に一番使うのか」です。社内文書のたたき台なのか、会議前の論点整理なのか、社員向け説明文なのか、ブログや発信の下書きなのか。主用途が決まると、見るべきポイントはかなり減ります。
たとえば、会議前の論点整理が主用途なら、文章の美しさよりも、抜け漏れを洗い出せることが大切です。社員向け説明文が主用途なら、難しい言葉をやわらかくできることが大切です。発信の下書きが主用途なら、自分の体験を読みやすく整理できることが大切です。用途が違えば、見るべき良さも変わります。
どのAIが絶対に一番かは、時期や使い方で変わります。料金や機能も変わります。だから、製品の優劣を断定するより、自社の主用途に合うものを1つ選び、まず使い倒す方が現実的です。

1つに絞ると、ようやく回り出した
そこから、使い方を変えました。まず主用途をひとつに決める。私の場合は、考えを整理し、文章や資料のたたき台を作ることでした。その用途に合うAIをひとつ選び、しばらくは他の道具を触らないようにしました。


すると、迷う時間が減りました。どこに相談するかを考えなくてよくなり、指示の型も溜まり始めました。この言い方は合う、この返し方は違う、この前提は毎回入れる。そうした小さな改善が、ひとつの道具に蓄積されます。
AI選びで大切なのは、最初から完璧な正解を当てることではありません。自分の主用途に合うものを選び、小さく試し、合わなければ見直す。その順番で十分です。
ここで大事なのは、「他を絶対に使わない」と決めることではありません。最初の一定期間だけ、使う場所をひとつに寄せることです。1つに寄せるから、指示の型も、失敗の記録も、改善のメモも残りやすくなります。その蓄積ができてから、必要なら別の道具を足せばよいのです。

まとめ:最強探しをやめ、主用途を1つ決める
AIツール選びで一番もったいないのは、使う前に比べ続けてしまうことです。比較は必要です。ただし、比較そのものが仕事になってしまうと、課金だけが増えて導入は進みません。
まずは、自社で一番使いたい場面を決める。会議資料なのか、文章作成なのか、社内説明なのか。その主用途に合いそうなAIを1つ選ぶ。そして、いきなり全社導入ではなく、小さく試す。これで十分前に進めます。
AIの出力は必ず人が確認してください。機密情報、個人情報、顧客情報、未公開情報をAIに入れないことも大前提です。お金、法律、税務、医療、健康などに関わる内容は、専門家や一次情報で確認してください。
次の一歩は、関連記事「最初の1週間でAIを小さく試す方法」で整理しています。シリーズ全体は noteマガジン からも追えます。




