「葬祭業にAIは合わない」。私もそう思っていました。遺族に向き合う仕事を、機械に任せるものではないからです。
ところが、現場を見直すと、毎回ゼロから整えている文章がたくさんありました。司会進行の雛形、式場の案内文、資料送付の礼状、打合せ後の議事録。弔いそのものではなく、その周りにある裏方の文章仕事です。
AIに任せる場所を間違えなければ、人の仕事を奪うのではなく、人が遺族と向き合う時間を守れます。この記事では、葬祭業ですぐ試せる3本の完成プロンプトを、Before/Afterと差し替え箇所つきで紹介します。

毎回似ているのに、文章づくりで時間が溶ける
司会原稿や案内文には、自社で使う言い回しや確認順があります。それでも案件ごとに文書を開き、過去の原稿を探し、必要な箇所を抜き出して整えるうちに時間が過ぎます。
遅い時間に原稿を見直していると、文章の骨組みを作る作業と、目の前の方へ向き合う仕事が同じ重さで並んでしまいます。本当に人が時間を使うべき場所は、そこではありません。



AIに任せる文章と、人が守る部分を分ける
線引きは明確です。AIへ渡してよいのは、個別事情を含まない雛形や構成です。故人名、遺族情報、連絡先、具体的な事情、未公開情報は入力しません。AIが作った空欄つきの雛形へ、人が確認済みの情報を後から入れます。
弔辞、遺族への言葉、弔いの心はAIに書かせません。宗派や地域の作法も、AIの説明を正解として扱わず、必ず社内の責任者や関係者へ確認します。

業務A:司会進行・式次第のたたき台を作る
最初に試すなら、司会進行の「個別情報を入れる前の雛形」です。完成原稿を任せるのではなく、確認順と差し込み欄がそろった土台を作らせます。
あなたは、葬祭業の社内文書を整理する補助者です。個別の式でそのまま読む原稿ではなく、司会担当者が確認しながら仕上げる「司会進行・式次第の共通雛形」を作ってください。 【大前提】 - 故人名、遺族情報、連絡先、会場名などの個人情報・機密情報は扱わない - 弔辞、遺族への個別の言葉、故人の人柄や思い出は書かない - 宗派・地域・会場によって異なる作法は断定せず「要確認」とする - すべての固有情報は [人が記入] の空欄にする - AIの出力は必ず責任者と司会担当者が確認する前提にする 【目的】 司会担当者が、必要事項の確認漏れを防ぎながら、自社の言葉で原稿を仕上げられる土台を作る。 【作ってほしいもの】 次の順番で、各場面を1つずつ作ってください。 1. 開式前の事務案内 2. 開式の案内 3. 進行が切り替わる場面の案内 4. 閉式後の事務案内 【各場面の形式】 - 場面名 - 読み上げ用の短い定型文 - [人が記入] の差し込み欄 - 司会担当者の確認事項 【文体】 - 落ち着いた、簡潔な敬語 - 過度に感情を表現しない - 自社の言い回しに差し替えやすい短文 【今回の入力】 - 用途:社内で共通利用する空欄つき雛形 - 個別情報:入力しない - 自社表現:後から人が差し替える - 作法:地域・宗派・会場ごとに人が確認する
Before:曖昧な一言
葬儀の司会原稿を作って。
これではAIが個別の式を想像し、確認していない進行や表現を補うおそれがあります。
After:人が仕上げられる実文
【場面】開式前の事務案内 【読み上げ用】 「まもなく [人が記入:進行名称] を始めます。皆さまには [人が記入:会場での案内事項] について、ご協力をお願いいたします。」 【司会担当者の確認】 - 進行名称は、責任者が確認した表記か - 会場案内は当日の運用と一致しているか - 地域・宗派・会場固有の作法を断定していないか - 個別の呼びかけや弔いの言葉は、人が考えているか
[進行名称]、[会場での案内事項]、自社の定型表現、当日の確認事項だけを、責任者が確認してから入れます。故人・遺族の情報は、AIへの入力欄には入れません。

業務B:案内文・礼状の定型部分を作る
次は、日時や連絡先を入れる前の事務案内と、資料送付などに添える礼状の定型部分です。個別の心情に触れる文章は人が書き、AIには案内の順番と空欄を整えさせます。
あなたは、葬祭業の事務文書を整理する補助者です。参列者向け案内文と、資料送付時に添える礼状の「空欄つき定型雛形」を1本ずつ作ってください。 【大前提】 - 故人名、遺族情報、住所、連絡先などは入力・推測しない - お悔やみ、弔辞、遺族への個別の言葉は作らない - 固有情報はすべて [人が記入] と表示する - 宗派・地域・会場で異なる案内は「責任者確認」と表示する - AIの出力は必ず人が読み、事実と表現を確認する 【案内文の目的】 読み手が、必要な準備、当日の流れ、問い合わせ方法を迷わず確認できるようにする。 【礼状の目的】 資料を受け取ったこと、または資料を送付したことを事務的かつ丁寧に伝える。個別の気持ちを代筆しない。 【形式】 1. 件名 2. 宛名 [人が記入] 3. 用件を伝える本文 4. 日時・場所・持ち物・問い合わせ先の確認欄 5. 差出人 [人が記入] 6. 人が確認する項目 【文体】 - 簡潔で落ち着いた敬語 - 難しい言葉を避ける - 1文を短くする 【今回の入力】 - 案内の種類:当日の事務案内 - 礼状の種類:資料送付に添える定型文 - 個別情報:入力しない
Before:情報の置き場がない文
当日はよろしくお願いします。詳しいことは会場でご案内しますので、お気をつけてお越しください。
何を準備し、どこを確認すればよいかが読み手に伝わりません。
After:確認欄が見える実文
件名:[人が記入:ご案内の件名] [人が記入:宛名] 様 当日のご案内をお送りします。以下の内容をご確認ください。 日時:[人が記入] 場所:[人が記入] ご準備いただくもの:[人が記入/ない場合は削除] お問い合わせ先:[人が記入] 地域・宗派・会場により異なる事項は、責任者確認後に追記してください。 [人が記入:差出人]
件名、宛名、日時、場所、持ち物、問い合わせ先、差出人を人が入れます。個別の気持ちや遺族への言葉を添える場合は、AIに作らせず担当者本人が書きます。
業務C:打合せ議事録・当番・研修メモを整理する
3本目は、社内の情報整理です。走り書きのメモを、決定事項、未決事項、担当、確認期限に分けます。ここでも実名や案件情報は外し、役割名や仮名へ置き換えます。
あなたは、葬祭業の社内業務メモを整理する補助者です。次の架空メモを、引き継ぎに使える社内共有文へ整理してください。 【大前提】 - 故人・遺族・顧客の個人情報、実名、連絡先、具体的事情は扱わない - 未公開情報や機密情報は入れない - メモにない事実を推測で補わない - 不明な担当・期限は「要確認」とする - AIの出力は必ず担当者が確認する 【目的】 欠席者が、決まったこと、次に動く担当、未決事項を短時間で確認できるようにする。 【形式】 1. 3行要約 2. 決定事項 3. 未決事項 4. ToDo表(役割名/内容/期限/確認先) 5. 研修・当番へ残す注意点 【架空メモ】 - 案内文の共通雛形を見直す - 初稿は担当A、確認は責任者 - 次回研修で読み合わせをする - 当番表の引き継ぎ欄が分かりにくいので項目名を変える案 - 変更日は未定 - 地域・宗派で異なる案内は共通雛形に断定して書かない
Before:発言順に並べただけ
案内文を見直す話が出た。担当Aが作る。研修で読む。当番表も変えるかもしれない。日はまだ決まっていない。
After:次の行動が見える実文
【3行要約】 - 案内文の共通雛形を見直す - 担当Aが初稿を作り、責任者が確認する - 研修で読み合わせ後、当番表の変更案を検討する 【ToDo】 担当A|案内文の初稿作成|期限:要確認|確認先:責任者 研修担当|読み合わせの準備|期限:次回研修前|確認先:責任者 当番表担当|引き継ぎ欄の項目名案を整理|期限:要確認|確認先:管理者 【注意】 地域・宗派で異なる案内は共通雛形で断定せず、使用前に確認する。
担当は実名ではなく役割名でAIへ渡し、出力後に社内で差し替えます。期限、確認先、研修日、当番表の変更日は、決まっている事実だけを人が入力します。

安全に使うための4つの約束
書かせない:弔辞、遺族への言葉、弔いの心はAIに書かせません。
断定させない:地域、宗派、宗教儀礼、会場で異なる作法は、人が関係者へ確認します。
任せきらない:AIの出力は必ず人が確認し、自社の表現と当日の事実へ直します。
AIの役割は、空欄つきの下書きを早く用意するところまでです。最終責任を持つのは人です。この順番を崩さなければ、速さと丁寧さを両立しやすくなります。



まとめ:AIは裏方、人は遺族と向き合う
葬祭業は、AIに縁遠い仕事ではありません。ただし、使う場所を選ぶ必要があります。司会原稿の共通雛形、案内文の確認欄、議事録の整理はAIへ。遺族への言葉、弔いの心、宗派や地域に関わる判断は人へ。
まずは、業務Aの完成プロンプトをそのままコピーし、個別情報を一切入れずに「司会進行の共通雛形」を作ってみてください。出力を自社の言葉へ直し、責任者が確認するところまでが1セットです。



