この記事はAI Manager Lab「AI分業3部作」の完結篇です。aml-001「分業の思想」では「なぜAIを複数の役割で使うのか」を整理しました。aml-002「5ステップ実演」では実際のブログ1本の流れをステップごとに追いました。この記事では「実際の業務で、どちらのAIに何を任せるか」を、業務別の使い分け早見表と4つのケース実演で整理します。
結論は最初にお伝えします。Claude CodeとCodex(ChatGPT)は優劣ではなく分業です。「どちらが賢いか」を競うのではなく、「その業務は設計役か作業役か」で使い分けることが大切です。そしてAIは間違えます。最終確認は必ず人間が行います。この前提を共有した上で読み進めてください。
なお、この記事の情報は2026年6月時点のものです。仕様・料金・プラン名・上限は変わることがあります。最新情報は各サービスの公式サイトでご確認ください。
結論|優劣ではなく「向いている仕事」が違う
「ChatGPT(Codex)とClaude Codeはどちらが優れているか」という問いをよく見かけます。この記事ではその問いに答えません。優劣ではなく分業——これが3部作を通じた一貫した答えだからです。
それぞれの向き不向きをひとことで言えば:
- Codex(ChatGPT):目的を決める、構成を考える、完成物をレビューする「設計役」
- Claude Code:本文を書く、装飾する、反復作業を処理する「作業役」
- 人間:判断する、公開のGOを出す、機密情報を扱う「確認役」
この3つの役割を混同せずに使うことが、AI業務活用のコツです。aml-001で詳しく説明した「分業の思想」が、具体的な業務ではどう機能するかを、この記事で確認していきます。
大まかな振り分け原則
この章の要点:AIを万能担当にせず、設計役・作業役・確認役に分けると迷いにくくなります。
設計役:目的・読者・構成・リスクを決める
「この記事は誰に向けて何を伝えるか」「このメールのトーンはどうするか」「この研修の目標は何か」——こうした「方向を決める」作業は、Codexが向いています。曖昧な問いに対して問い直しを行い、構造を整理する場面で力を発揮します。
設計役の成果物の例:目的定義、読者像、アウトライン、チェックリスト、レビュー観点
作業役:本文・装飾・反映など手を動かす
設計が決まったあと、実際に文章を書く・装飾コードを追加する・繰り返しの処理を実行する作業は、Claude Codeが向いています。長い本文を一定品質で書き続ける作業・HTMLやMarkdownへの変換・スタイルの統一といった「手を動かす」作業に強みがあります。
作業役の成果物の例:本文、HTML、装飾済みドラフト、整形されたデータ
確認役:人間が最終判断する
公開・送信・外部配信・課金操作は、必ず人間が確認してGOを出します。AIは間違えます。表現の誤り・事実の誤り・トーンのズレは、人間のチェックで発見することが多いです。「AIが出したから正しい」という前提では運用しないことが、安全なAI活用の基本です。
業務別の使い分け早見表
この章の要点:業務ごとに考える役と手を動かす役を分けると、AI運用が安定します。
| 業務 | 設計役(Codex) | 作業役(Claude Code) | 人間確認 |
|---|---|---|---|
| ブログ記事 | 構成・レビュー | 本文・装飾・反映 | 公開GO・事実確認 |
| 議事録整理 | 確認観点の整理 | 要点抽出・まとめ | 機密確認・配布判断 |
| 取引先メール | トーン設計 | 本文下書き | 宛名・金額・送信GO |
| 社内研修資料 | 目標・対象者設定 | 章立て・本文化 | 配布前・内容確認 |
| 業務マニュアル | 構成・手順整理 | 本文作成・整形 | 手順の正確性確認 |
| データ整理 | 集計方針の確認 | フォーマット変換 | 数値の正確性確認 |
| Web記事リライト | 改善観点の整理 | リライト実行 | 公開前の最終確認 |
| 公開前チェック | チェックリスト作成 | 表現統一の確認 | 最終GO(人間のみ) |
※この表は「向いている」の目安です。業務の規模・内容・チームの状況によって使い方は変わります。
ケース1|ブログ記事を1本書く
この章の要点:ブログはCodexで設計・レビューし、Claude Codeで本文と装飾を進める流れが合います。
このブログ自体がその実例です。aml-002「5ステップ実演」で詳しく手順を追っていますが、この記事では各ステップを誰に任せるかに絞って整理します。手順の細かい流れはaml-002を参照してください。
Step1 設計はCodex
記事の目的・読者像・タイトル候補・構成のアウトラインをCodexに出してもらいます。「誰に向けて、何を伝え、読後に何を理解してほしいか」を言語化する作業です。このステップで方向がズレると、後の作業がすべて空振りになるため、設計に時間をかけることが大切です。
Step2 本文はClaude Code
設計が固まったら、Claude Codeで本文を書きます。アウトラインをそのまま渡し、各セクションの本文を生成します。長い文章を一定品質で処理し続けるのはClaude Codeが向いている作業です。
Step3 レビューはCodex
本文の初稿ができたら、Codexにレビュー観点で読んでもらいます。「読者に伝わっているか」「構成の抜け漏れはないか」「表現の矛盾はないか」を確認し、修正指示を出します。設計役が作業役の成果物を確認する流れです。
Step4・5 修正と装飾はClaude Code
レビュー指示をもとにClaude Codeで修正し、HTMLやMarkdownへの装飾を加えます。図解コメントの挿入・calloutの追加・table整形など、反復的な整形作業はClaude Codeで処理します。公開GOは人間が出します。
ケース2|議事録を要点整理する
この章の要点:議事録は要点抽出と判断分離が大切です。機密情報は伏せて扱います。
生データは必要最小限にする
議事録の生テキストをそのままAIに貼るときは、顧客名・社員名・未公開情報・金額・プロジェクト名などの機密情報を先に伏せます。「〇〇社」→「A社」、「山田部長」→「部長」のように置き換えてから渡すのが基本です。顧客情報・社員情報・APIキー等をAIに入れないことは、AI運用の大原則です。
要点抽出はClaude Code
機密を伏せた議事録テキストをClaude Codeに渡し、「決定事項・保留事項・次のアクション担当者」に分類してもらいます。長い文章から要点を取り出す反復処理は、Claude Codeが向いています。
構成と確認観点はCodex
「この会議の要点をどの粒度でまとめるべきか」「どの順番で提示すると共有しやすいか」という整理の設計はCodexに相談します。チェックリスト形式で確認観点を出してもらう使い方も有効です。
社内名・顧客名・未公開情報は伏せる
AIが出力した議事録まとめも、配布先・配布範囲の判断は必ず人間が行います。機密事項を含む文書はAI通過後も人間が内容を確認してから共有します。
なお、社内ルールでAI入力自体が禁止されている情報は、名前を伏せても入力しないでください。AIに渡してよい範囲は、自社の情報管理ルールを優先して判断します。「伏せれば必ず入力してよい」ではなく、まず自社ルールを確認してください。
ケース3|取引先メールを下書きする
この章の要点:メールはトーン設計と本文作成を分けます。実名や金額は人間が後入れします。
トーン設計はCodex
「この取引先には丁寧だが簡潔に。依頼内容はAとBの2点」といったメールの方向性を、Codexに整理させます。「どのトーンで書くか」という設計は、相手との関係性・内容の重さ・目的を踏まえた判断が必要で、設計役の仕事です。
本文化はClaude Code
トーン設計が決まったら、Claude Codeで本文を下書きします。「丁寧なトーン、依頼2点、200字程度」といった指示を渡すと、それに沿った下書きを出力します。
宛名・社名・金額・日付は人間が確認
メールのもっとも重要な要素——宛名の正確さ、金額の一致、日程の確認、送信先のアドレス——は人間が最終確認してから送信します。AIが出した下書きをそのまま送らないことが鉄則です。公開・課金・外部配信は人間GO後が基本です。
取引先の正式名称・担当者名・金額・納期は、必ずAI出力後に人間が確認・修正します。AIは入力した情報しか使えず、確認していない情報を正確に出力する保証はありません。
ケース4|社内研修資料を作る
この章の要点:研修資料は目的と対象者を先に決めると、作業AIに渡しやすくなります。
研修目標の設計はCodex
「この研修で参加者に何ができるようになってほしいか」「対象は新入社員か、管理職か」「時間は60分か120分か」を先に整理します。この設計がないまま作業を始めると、資料の粒度や内容がブレやすくなります。Codexに「研修目標の設計を手伝って」と問いかけると、目標・対象者・コンテンツ構成の整理を一緒に進めることができます。
章立てと本文化はClaude Code
設計が決まったら、Claude Codeで章立てと本文を作ります。各セクションの説明文・演習問題の下書き・チェックリスト形式のまとめなど、量のある作業はClaude Codeで処理します。
見た目と配布前確認は人間
スライド化・レイアウト調整・誤字脱字の最終確認・会社の規定に沿った表現への修正は人間が行います。AIが出した本文に「社内規定と違う表現」「古い数値」が混ざることがあるため、配布前の確認は省かないことが大切です。
料金プランと体感
この章の要点:料金や上限は時期で変わります。ここでは2026年6月時点の体感として整理します。
ChatGPT Plus・Claude Proの標準的な組み合わせ
2026年6月時点の筆者の利用環境では、ChatGPT Plus系のプランとClaude Pro系のプランを組み合わせると、月6,000円前後の体感になることがあります。ただし、料金・利用上限・使える機能・為替は変わるため、実際に契約する前に必ず各公式サイトで確認してください。プラン名・提供条件も変更されることがあります。
| サービス | 本記事での主な用途 | 2026年6月時点の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ChatGPT Plus(Codex) | 設計役・レビュー役 | 月約3,000円前後 | 為替・プランで変動 |
| Claude Pro(Claude Code) | 作業役・本文化 | 月約3,000円前後 | 使用量上限あり |
※料金・プラン名・上限は変更になることがあります。最新情報は各公式サイトでご確認ください。
月6,000円ほどの体感
2サービスを合わせて月6,000円前後を払っている感覚ですが、使い方の重さ・依頼の量・プランの変更によって実際は変わります。「毎月ほぼフル活用」の場合と「週に数回使う」場合では体感が異なります。
使い方・依頼の重さ・時期で変わる
長文の生成・大量の反復処理・高負荷の依頼が続くと、プランの使用量上限に達することがあります。上限に達した場合、翌月まで待つか、上位プランへの移行が必要になるケースがあります。
最新は公式で確認
この記事の料金情報は2026年6月時点の体感に基づきます。仕様・料金・プラン名・上限は変わります。最新情報はOpenAI公式サイトおよびAnthropic公式サイトでご確認ください。
切替の合図|こうなったら相手に振る
この章の要点:同じAIで迷い始めたら、役割を切り替える合図です。2回往復で人間に戻します。
「設計役に頼んでいたら作業まで始めてしまった」「作業役に頼んでいたら方向性の議論になってきた」というズレは、AI運用でよく起きます。以下のサインが出たら、切り替えを検討してください。
- 「この方向で合っているか分からない」と感じたら → 設計役(Codex)に切り替えて方向を確認する
- 「いつまで経っても方針が決まらない」と感じたら → 作業役(Claude Code)に渡して仮の成果物を出す
- 「AIが出した内容が何度直しても合わない」と感じたら → 2回往復したら人間が判断に戻る
- 「設計が膨らみすぎて収拾がつかない」と感じたら → 作業役に渡して「まず1本書いてみる」に切り替える
- 「完成物が公開できるか迷う」と感じたら → AIには判断できない。人間がGOを出す
原則として「2回往復して着地しなければ人間判断へ戻す」を守ると、AIと迷走するリスクが減ります。
「設計役か作業役か」を意識するだけで、依頼の精度が上がります。「考えてほしい」依頼はCodexへ、「書いてほしい」依頼はClaude Codeへと分けるだけで、それぞれの得意な領域が活かせます。迷ったらいつでも役割の確認に戻ってください。
真似するときの注意点
この章の要点:AI運用では機密情報と公開GOを人間が握ります。自動化しすぎないことが大切です。
顧客情報・社員情報・APIキーを入れない
AIへの入力に、実在する顧客名・社員の個人情報・契約金額・APIキー・パスワードを含めないことが大原則です。AIサービスはクラウド上で動作しており、入力した情報の取り扱いはサービスの利用規約に依存します。社内の機密情報は、必要最小限に伏せてから渡す習慣をつけてください。
AIは間違える前提で確認する
AIは事実を誤って出力することがあります(ハルシネーションと呼ばれます)。数値・固有名詞・日付・法令の解釈・手順の正確さは、AIが出した内容をそのまま信頼しないでください。最終確認は必ず人間が行います。
公開・課金・外部配信は人間がGOを出す
Webページの公開・メールの送信・外部へのデータ配信・課金操作は、AIに任せず人間が最後にボタンを押します。「AIが問題ないと言ったから公開した」という判断の委任は、トラブルの原因になりやすいです。
AIへの入力情報の取り扱いはサービスの利用規約に依存します。社内の機密情報・個人情報・未公開情報をAIに入力する前に、自社の情報管理ルールと各サービスの利用規約を確認してください。「情報漏えいの心配はない」という前提では運用しないことが大切です。
まとめ|3部作の総括
この章の要点:思想、手順、使い分けをそろえると、AI分業を小さく始められます。
aml-001:なぜ分業するか
aml-001「Claude CodeとCodexで作るAIチーム」では、AIを1人の万能担当にせず「設計役・作業役・確認役」に分ける思想の背景を整理しました。優劣ではなく分業という考え方の出発点がここにあります。3部作の「なぜ」を担う記事です。
aml-002:どう進めるか
aml-002「AIでブログを書く5ステップ」では、ブログ記事1本を実際に書く手順をステップごとに追いました。誰がどのステップを担うかを具体的に見せることで、「分業が実際にどう機能するか」を確認できます。3部作の「どうやるか」を担う記事です。
aml-003:どちらに何を任せるか
この記事では早見表と4ケース実演で「業務ごとに設計役と作業役をどう振り分けるか」を整理しました。優劣ではなく分業——この軸を持つことで、業務の種類が変わってもAIへの依頼の仕方が判断しやすくなります。3部作の「何をどちらに任せるか」を担う記事です。
まず自分の業務1本で試す
3部作を通じて伝えたかったことは「完璧な運用を最初から作らなくていい」ということです。早見表の8業務のうち、自分が毎週やっている業務を1つ選んで、「設計役」「作業役」「確認役」を分けて試してみてください。AIは間違えます。最終確認は人間が行います。その前提で少しずつ使い方を積み上げていくことが、非エンジニアのAI活用の現実的な道です。