非エンジニアのAI実務術 2026年7月5日 · 読了 13分

同じ質問に毎回答えていませんか|お店の「よくある質問」をAIと整える方法【FAQ作成】

お店のよくある質問(FAQ)をAIと整える方法。質問の洗い出しから、キャンセル料など答えにくい質問の文面、1問ずつ増やせる型まで完成プロンプトつき。やり取り原文は貼らず、料金・規約は店が確認します。

同じ質問に毎回答えていませんか|お店の「よくある質問」をAIと整える方法【FAQ作成】

「駐車場はありますか」「予約なしでも入れますか」「キャンセル料はかかりますか」。電話で、DMで、店頭で、今日も同じ質問に同じ答えを返す。忙しい時間帯ほど、この返事に手が止まります。

同じ質問が繰り返されるのは、お客様のせいではありません。答えがどこにも書かれていないか、書いてあっても見つからないからです。

この記事では、お店・事業所の「よくある質問(FAQ)」を、AIと整えて一枚の資産にする方法を紹介します。AIに任せるのは整理と言い換えまで。料金や規約など答えの中身は、店で決定済みの事実だけを使い、公開前に人が確認します。実際のお客様とのやり取りの原文は、AIに貼りません。

お店のよくある質問をAIと整えて答えを資産にする図

返事の時間は、積み重なると営業時間を削る

1回の返事は2〜3分でも、1日に5回、月に100回なら数時間です。しかも口頭やDMの返事は、その場で消えていきます。明日また同じ質問が来れば、また同じ時間がかかります。

さらに、答える人によって内容がばらつく問題もあります。店主は「前日までのキャンセルは無料」と答え、スタッフは「2日前まで」と答える。こうした食い違いは、あとで大きなトラブルになります。

同じ質問への返事に毎回時間を取られている様子を示す図
マナブ
お客様とのLINEのやり取りを全部AIに貼れば、よくある質問のリストが一発でできそうですね。
考えるマナブ
説明するラボ博士
ラボ博士
それはやめましょう。やり取りにはお客様の名前・予約内容・連絡先が含まれます。原文は貼らず、「どんな質問が多いか」だけを自分の記憶とメモから書き出します。それで十分作れますよ。

扱うのは店の案内ごと。専門判断は専門家へ

この記事で扱う:営業時間、予約方法、支払い方法、駐車場、キャンセルの決まり、サービス内容など、店・事業所への「案内ごと」のFAQづくり。
この記事で扱わない:法律・医療・税金など、専門資格が要る質問への回答(専門家に確認し、FAQには「お問い合わせください」と書きます)。個別のクレームへの返信も対象外です。

FAQは「全員に同じ答えを返してよい質問」だけを載せる場所です。個別の事情で答えが変わる質問は、問い合わせ先の案内にとどめます。

基本は4段階:質問出し、たたき台、直す、店で確認

よく聞かれることを箇条書きで渡すと、AIが質問と答えの形に整えます。答えにくい質問は追加指示で言い方を練り、最後に料金・規約が決定済みの事実と合っているかを店で確認してから公開します。

よくある質問をAIとの往復でFAQに整える4段階の流れ図

ケース1:よくある質問を洗い出して、基本のFAQを作る

例はすべて創作です。実在の店・お客様のやり取りではありません。

1. コピペ用完成プロンプト
あなたは、小さなお店の「よくある質問」ページを整える下書き係です。次のメモを、お客様が読みやすいFAQの形に整理してください。

【大前提】
- お客様との実際のやり取り・氏名・予約内容は扱わない(このメモにも含めていない)
- 料金・規約・営業時間は、メモに書かれた決定済みの事実だけを書く。無い決まりを作らない
- 分からないことは[店で確認:〇〇]と書いて残す
- 法律・医療・税金など専門判断が要る質問には、答えを作らず「お問い合わせください」と案内する

【よく聞かれることのメモ】
- 駐車場ある?→[例:2台あり、満車時は隣のコインパーキング]
- 予約なしで入れる?→[例:平日は可、土日は予約優先]
- 支払いは?→[例:現金とPayPay、カード不可]
- キャンセル料は?→[例:前日までは無料、当日は50%と決定済み]

【出力形式】
1. 質問(お客様の言葉で短く)
2. 答え(結論を先に、理由や補足は1文まで)
3. [店で確認]の一覧

【文体】
- ていねいだが硬すぎない
- 1つの答えは3行まで
2. AIの返し(例)
Q. 駐車場はありますか?
A. 2台分ございます。満車の場合は、隣のコインパーキングをご利用ください。

Q. 予約なしでも利用できますか?
A. 平日はご利用いただけます。土日はご予約の方を優先しております。

Q. 支払い方法は何が使えますか?
A. 現金とPayPayがご利用いただけます。クレジットカードは現在ご利用いただけません。

Q. キャンセル料はかかりますか?
A. 前日までのご連絡は無料です。当日のキャンセルは料金の50%を頂戴しております。
3. 直す追加指示
質問の並び順を「来店前に知りたい順」(駐車場・予約→支払い→キャンセル)に並べ替えてください。「頂戴しております」は「いただいています」に直し、全体の言葉づかいをそろえてください。メモに無い決まりが足されていないか、最後に自己点検の一覧を付けてください。
4. Before / After

Before:答えが人の頭の中にある状態

(電話のたびに、その場で説明。スタッフによって「キャンセルは2日前まで」と答えたり「前日まで」と答えたりが混在)

After:一枚にまとまったFAQ

来店前に知りたいこと、お支払い、キャンセルの決まりが1ページに。
誰が対応しても「詳しくはこちらをご覧ください」で同じ答えに案内できる。
人が確認する箇所:料金・キャンセルの決まり・営業時間が、店で決定済みの事実と一致しているかです。FAQは公開した瞬間から「店の約束」になるため、ここだけは必ず目で確かめます。

ケース2:答えにくい質問こそ、先に書いておく

ここが本編の中心です。「キャンセル料を取るのか」「返金できるのか」「値引きできるのか」。口頭では言いにくい質問ほど、FAQに事実と理由で書いておくと、現場の負担が減ります。

1. コピペ用完成プロンプト
あなたは、小さなお店のFAQのうち「答えにくい質問」の文面を整える下書き係です。次の決定済みの決まりを、冷たく見えず、かつ曖昧にならない答えに整えてください。

【大前提】
- 決まりの内容そのものを変えない・ゆるめない・厳しくしない
- 店が決めていない例外(「場合によっては無料」等)を作らない
- 謝りすぎない。責めない。お客様を疑う書き方をしない
- 理由は、メモにある事実を1文だけ使う

【決定済みの決まり】
- 決まり:[例:当日キャンセルは料金の50%]
- 理由として公開してよい事実:[例:材料の仕込みを前日に行うため]
- 例外:[例:なし。または決定済みの例外だけ]

【出力形式】
1. 質問文(お客様の言葉で)
2. 答え(結論→理由1文→お願いの順)
3. 言いにくさを和らげた工夫の説明
2. AIの返し(例)
Q. 当日キャンセルはできますか?
A. ご事情があるときは、まずお電話ください。当日のキャンセルには、料金の50%をお願いしています。前日までに仕込みを行っているためです。日程の変更は前日まで無料ですので、お早めにご相談ください。

3-A:冷たさを消す

最初の一文を、決まりの宣言ではなく「まず連絡してほしい」という案内にしてください。ただし、50%という決まり自体はぼかさず明記したままにしてください。

3-B:無い例外を消す

「ご事情によっては無料になる場合があります」のような、入力していない例外が入っていれば削除してください。削除した箇所を一覧で示してください。

3-C:全部の答えにくい質問へ展開する

同じ「結論→理由1文→お願い」の形で、[返金の決まり]と[値引きのお断り]の答えも作ってください。決まりと理由はこのあと私が入力します。入力していない部分は空欄のままにしてください。
4. Before / After

Before:曖昧にして、その場しのぎ

Q. 当日キャンセルはできますか?
A. ケースバイケースですので、ご相談ください。

After:事実と理由で、先に答える

Q. 当日キャンセルはできますか?
A. まずお電話でご相談ください。当日のキャンセルは料金の50%をお願いしています。前日に仕込みを行っているためです。前日までの変更は無料です。
店の人が決める箇所:決まりそのもの、公開する理由、例外の有無です。AIが決めるのは言い方だけで、決まりを決めるのは店です。迷う決まり(返金など消費者への約束ごと)は、公開前に商工会や専門家へ相談します。
指し示すラボ博士
ラボ博士
答えにくい質問を曖昧にしておくと、現場が毎回その場で判断することになります。決まりを先に文字にしておくのは、お客様のためでもあり、スタッフを守るためでもあります。
マナブ
「ケースバイケースです」って、答えているようで何も答えていなかったんですね。
気づくマナブ
FAQづくりでAIに任せる整理と人が守る規約や個人情報の線引きを示す図

ケース3:FAQを「3空欄の型」にして育てる

FAQは一度作って終わりではなく、新しい質問が来るたびに1問ずつ増やしていくものです。足しやすい型にしておきます。

1. コピペ用完成プロンプト
あなたは、小さなお店のFAQの型を作る下書き係です。新しい質問が来たときに、次の3空欄を埋めるだけで追加できるテンプレートを作ってください。

【大前提】
- 空欄以外の定型句を増やさない
- お客様の個人情報を書く欄は作らない
- 「決定済みか確認」のチェックを必ず入れる

【3つの空欄】
1. [質問:お客様の言葉で]
2. [答え:結論→理由1文→お願い]
3. [根拠:店のどの決まりに基づくか(社内メモ・非公開)]

【形式】
- 質問
- 答え
- (社内用)根拠と更新日
- 追加前チェック
2. AIの返し(例)
Q. [質問:お客様の言葉で]
A. [答え:結論→理由1文→お願い]

(社内用・公開しない)
根拠:[店のどの決まりか] 更新日:[日付]

追加前チェック:
□ 決まりは決定済みか
□ 料金・日付は事実と一致するか
□ 無い例外を書いていないか
□ 専門判断が要る内容ではないか
3. 直す追加指示
「社内用」の部分が公開ページに載らないよう、公開用と社内用を分けた2つの型にしてください。社内用には「答えた人によるばらつきが起きた質問」をメモする欄を足してください。
4. Before / After
(新しい質問が来ても、答えた本人の記憶にだけ残る)
新しい質問→3空欄を埋める→チェック4つ→FAQに1問追加。
月に数問ずつ、店の「答えの資産」が増えていく。

よく聞かれる質問が10を超えたら、「来店前」「お支払い」「キャンセル」のように見出しで分けると探しやすくなります。分け方の相談もAIにできます。

毎回その場で返事する状態から書いてあるFAQで案内する状態へのBeforeAfter図

安全に使うための4つの境界

やり取りの原文を貼らない:お客様とのLINE・メール・DMには氏名や予約内容が含まれます。質問の傾向は、記憶とメモから書き出します。
無い決まりを作らせない:AIは「場合によっては無料」のような例外をそれらしく足すことがあります。決まりは店が決め、AIは言い方だけを整えます。
専門判断をさせない:法律・医療・税金・補助金など資格や専門知識が要る回答は作らせず、「お問い合わせください」と案内します。
公開前は人が確認:料金・時間・決まりが決定済みの事実と一致しているか、店の人が読んでから公開します。

FAQは、公開した瞬間から店の約束になります。だからこそ、整理はAIに任せても、約束の中身は人が握ります。

マナブ
記憶から質問を書き出す、決まりは店が決める、公開前に事実を確認する。この順番なら安心ですね。
うなずくマナブ
ほほえむラボ博士
ラボ博士
まずは、今週いちばん多く聞かれた質問を3つ思い出すところからです。それをケース1のプロンプトに入れれば、今日中に最初のFAQができますよ。
やり取り原文を貼らず規約は店が確認し今日3つの質問から書き出す次の一歩とシリーズ位置の図

まとめ:答えは毎回作らず、一度作って育てる

同じ質問への返事は、毎回作れば「作業」ですが、一度書いて使い回せば「資産」です。よく聞かれることを記憶から書き出し、AIに質問と答えの形へ整えてもらい、答えにくい質問は事実と理由で先に書いておく。料金や決まりの確認と、約束の中身の決定は、店の人が担います。

まずは、よく聞かれる質問を3つ書き出すところから始めてください。

次の一歩:AIへの指示の組み立て方を身につけたい方は、「AIへの指示を背景・ゴール・形式・制約の4要素で作る方法」へ進んでください。業種別・文書別シリーズの続きは noteマガジン で追えます。
AM

非エンジニアの経営者。Codex × Claude Code × ChatGPT を"部下"として使い倒し、現場で起きたことをそのまま記録しています。

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