AIの答えを見て、「なんか違う」と思いながら、黙って全部やり直させる。何回か回して、当たりが出ないまま、結局自分で書き直す——AIがいまいち定着しない職場で、必ず起きている光景です。
このシリーズで葬儀の案内文から求人票、議事録、アンケートまで15種類の文書を扱ってきて、はっきり言えることがあります。仕上がりを決めるのは、最初の指示よりも「2回目に返す一言」です。
この記事は、その「返す一言」を10個に整理した総集編です。どの文書にも使えます。保存して、次にAIを使うときに1つだけ試してください。

「もっと良く」が指示にならない理由
いまいちな答えへの返しで一番多いのが、「もっと良い感じにして」です。これが効かないのは、AIが「何が悪かったのか」を知らないままだからです。良い感じの方向が分からないので、別の当てずっぽうが返ってきます。
コツは、自分の不満の正体を一言に翻訳することです。「言い訳っぽい」と感じたなら「理由を1文に」。「読みにくい」なら「結論を先に」。不満はだいたい、10種類の直しの言葉のどれかに翻訳できます。



使い方は3つだけ
②2〜3往復で切り上げる:それ以上かかるなら、最初に渡した情報が足りていません(指示の4要素に戻ります)。
③仕上げは自分:事実の確認と最後の一文は、往復の外側の、人の仕事です。

直しの言葉 10選
① 理由を1文にしてください
使う場面:理由や事情が長く並んで、言い訳がましく見えるとき。値上げのお知らせ、断りのメール、報告書で頻出です。
理由の羅列をやめて、渡した事実から1つだけ選び、1文にしてください。
② 謝りすぎを消してください
使う場面:「心苦しい」「深くお詫び」「恐縮ですが」が1つの文章に何度も出てくるとき。謝るたびに結論がぼやけます。
謝罪の表現を1回だけにして、結論がぼやけないようにしてください。
③ 結論を先にしてください
使う場面:経緯やあいさつが長く、一番大事な情報が後ろに埋まっているとき。連絡文・報告書・お知らせの定番です。
読み手が最初に知るべきこと(何が・いつ・どうなる)を、最初の3行に移してください。
④ 字数を半分にしてください
使う場面:内容は合っているのに、長くて読む気がしないとき。削る判断ごと任せると、大事な行が残ります。
内容を変えずに、全体を半分の字数にしてください。削った項目を一覧で教えてください。
⑤ 入力した事実以外を削ってください
使う場面:渡していない実績・理由・約束・数字が混ざったとき。10個の中で一番大事な言葉です。定期的にこれで点検します。
私が入力していない事実・数字・約束が入っていないか確認し、あれば削除して、削除箇所を一覧にしてください。
⑥ 日常の言葉にしてください
使う場面:業界用語や漢語が固くて、読み手に伝わらないとき。お客様向け・新人向けの文書で使います。
専門用語と固い言い回しを、初めての人にも分かる日常の言葉に直してください。
⑦ 箇条書きにしてください
使う場面:文章のかたまりが読みにくいとき。逆に、箇条書きが冷たく見えるなら「文章に戻して」も使えます。
並列の情報を箇条書きに変えてください。理由や説明は文章のまま残してください。
⑧ 読み手を変えてください
使う場面:内容は良いのに、誰に向けた文か合っていないとき。読み手の指定をやり直すと、言葉選びが全部変わります。
この文章を「[例:初めて来店する60代のお客様]」が読む前提で書き直してください。
⑨ 調子を変えてください
使う場面:固すぎる・軽すぎる・冷たい・馴れ馴れしいと感じるとき。方向を言葉にして渡します。
内容は変えずに、[例:もう少しやわらかく/もう少し簡潔に事務的に]してください。
⑩ 空欄を残してください
使う場面:最後の一言まで埋められてしまい、どこの職場でも使える定型文になったとき。自分の言葉の場所を確保します。
結びの一文は書かずに、[自分で書く一言]という空欄のまま残してください。

それでも、往復で直せないものがある
判断:どの案を採るか、公開するかどうか、約束してよいかは、往復の外側で自分が決めます。
個人情報と機密:直しの過程でも、名前・顧客情報・社外秘は入れません。入れない前提で書かせて、空欄に人が入れます。
最後の一文:相手との関係を知っているのは自分だけです。ここはAIに書かせず、⑩で空欄にして自分で書きます。
直しの言葉が10個あっても、この4つは動きません。むしろ、往復が上手になるほど、この境界の大切さがはっきりしてきます。



シリーズ全体地図:文書別に「往復の実演」へ
この10個の言葉が実際にどう効くかは、文書別の記事で実演しています。いま困っている文書から読んでください。
入口(ハブ):
・AIへの指示の型・4要素(背景・ゴール・形式・制約)——最初の指示の作り方はこちら
業種別:
・葬祭業:司会原稿・案内文
・飲食店:口コミ返信
・介護施設:家族向けお知らせ
・美容室:値上げのお知らせ
文書タイプ別:
・求人募集文/手順書・マニュアル/よくある質問(FAQ)
・断りのメール/スタッフへの連絡文/夏のあいさつ
・議事録/月次報告書/お願いの貼り紙
・お店の紹介文/お客様アンケート

まとめ:やり直させる前に、一言返す
AIの答えがいまいちなとき、必要なのは高度な技術ではなく、不満を一言に翻訳する癖です。理由を1文に。結論を先に。事実以外を削る。一度に1つ、2〜3往復。事実と判断と最後の一文は、自分の手に残す。
次にAIを使う1回で、10個のうちどれか1つを返してみてください。「もっと良く」と頼んでいた頃との違いは、その1回で分かります。



