私は葬儀社の管理職で、AIを毎日の実務に使っています。うちの仕事で扱う情報は、故人様やご遺族の個人情報、会員様の情報、スタッフの勤務事情——どれも、うっかりAIに貼り付けてよいものではありません。
先に正直に書くと、私はまだ、個人情報をAIに入れてしまう事故を起こしていません。だからこそ、この記事を書いています。事故の後で謝る文章より、事故の前に決めた線引きのほうが、これから始める方の役に立つはずだからです。うちで実際に使っている「3色ルール」と、それを紙1枚にした理由を公開します。
入れる前に、3色で考える

赤=入れない。お客様やご家族の個人情報。個人と結びつく契約金額。パスワードやアカウント情報。マイナンバーのような公的な番号。ここはチャットに貼らないだけでなく、AIとの共有ファイルやメモにも書きません。
黄=条件つきで入れてよい。スタッフの名前やシフト、売上のデータ、会議の文字起こし、社内文書の下書き。仕事で必要な場面はありますが、「必要最小限」「その作業の間だけ」が条件です。会議の録音を文字起こしにかけるなら、参加者の同意を先に取る。これも条件のうちです。
緑=入れてよい。すでに公開・共有されている資料、個人情報を含まない業務手順やノウハウ、個人と切り離した集計の数字。ここは思い切り使います。線の内側では遠慮しないことも、線引きの目的の半分です。
そして大原則がひとつ。迷ったら赤扱い。入れずに、まず確認する。効率より安全。
なぜ「事故の前」に紙1枚にしたのか
きっかけは、AIの活用を広げる相談をしていたときの、耳の痛い指摘でした。「今は、あなたの頭の中のルールで守られている。でも明文化された正本がない。ここが崩れたら、信頼は一発で終わる」。

頭の中のルールは、忙しい日と眠い夜に抜けます。私は深夜にAIと仕事をすることが多いので、なおさらです。だから「AIに入れてはいけない情報」を紙1枚の正本にして、迷ったらそこに戻ると決めました。印刷して手元にも置いています。1枚にした理由は単純で、2枚以上のルールは読まれないからです。
ヒヤリとした実話もひとつ。個人情報ではありませんが、ブログ用の画像をAI任せで処理していたとき、仕組みの不具合で別の記事の画像が付きかけたことがあります。公開前の目視で気づいて止めましたが、「機械はもっともらしい顔で間違える」を体で覚えた一件でした。この経験も、確認を仕組みにする方向へ背中を押しています。
ルールは「仕組み」に落とすと守れる

意志の力に頼らず、作業の入り口・途中・出口に工夫を置いています。
渡す前に置き換える。シフトの相談でも連絡文でも、スタッフの実名はA・B・Cの記号に変えてから貼ります。この一手間は、慣れると手癖になります。写す前に隠す。書類を撮影してAIに読ませるときは、名前や連絡先の欄を付箋や指で隠して撮ります。実名の差し込みは人がやる。お客様に関わる文書は、AIには【お名前】のような仮名のまま書かせて、実名は最後に自分の手で差し込みます。検索と置換だけなので1分です。そして記録にも残さない。チャットに入れなくても、AIと共有するメモや引き継ぎに書いたら同じことです。
そのまま使える完成プロンプト3ケース
この線引きづくり自体、AIに手伝わせることができます。
① 自分の業種の「3色分類」を作る
私は〔業種〕の〔立場〕です。仕事でAIに文章作成や集計を手伝ってもらいます。 扱う情報を「入れない(赤)/条件つきで入れてよい(黄)/入れてよい(緑)」の3色に分ける、私の業種向けの分類表のたたき台を作ってください。 迷いやすい境界の例も5つ挙げてください。最終判断は私がします。
② 貼る前の30秒チェックリスト
AIに文章や資料を渡す直前の「30秒チェックリスト」を作ってください。 「実名が残っていないか」「住所・電話・連絡先」「金額と個人の結びつき」「パスワード・アカウント情報」を含め、 〔業種〕でありがちな見落としを2つ足してください。全部で7項目以内、貼り紙にできる短さで。
③ スタッフに配る1枚ルールの下書き
上の3色分類を、スタッフにも配れるA4・1枚の「AIに入れてはいけない情報」ルールにまとめてください。 専門用語を使わず、例を1つずつ添えて、最後は「迷ったら入れずに、上司に確認」で締めてください。
チェックをAIに任せるときの注意:個人情報が入ったままの文章を「チェックして」と貼ったら本末転倒です。チェックリストで自分が確認してから渡します。
ルールは1枚・正本は1つ:コピーを増やすと古い版が事故のもとになります。直すときは正本だけを直します。
今日やることは1つだけ。①のプロンプトで、自分の仕事の3色分類のたたき台を作って、赤の欄だけでも紙に書き出してみてください。線を引いた日から、線の内側では安心してAIに任せられるようになります。それが、この線引きの一番の効用です。
AIの答えを確かめる仕組みは「鵜呑みにして失敗しないために」、個人情報がとくにシビアな現場の実例は「介護施設の家族向けお知らせ文」、AIを部下として使う毎日は「AIを「4人の部下」として使い分ける私の一日」へ。
※業種別「AIコピペ集」(有料note・第1弾は飲食店の口コミ返信セット)も、個人情報を入れずに使える形で作っています。



